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映画「望郷」パリの匂いのする女

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舞台はフランス植民地下のアルジェリア。カスバという迷宮・ラビリンスと化した他民族地帯。訪れるものはこの迷路のごとき街並みにただ茫然と佇んでしまうだろう。パリで銀行強盗等を犯したギャング、ペペ・ル・モコがこの地に隠れうごめい潜んでいた。フランスの警視庁も逮捕に向けて躍起になるが、いかんせんこのハチの巣のような街並みに翻弄されてアジトが良くつかめない。ペペは地元の女・イネスに囲われていたが、そんなヒモ状態にも、そしてこのカスバの街にうんざりしていた。

ペペにはかわいい弟分ピエロがいた。その他ペペを畏怖し尊敬するあまたの地元民の庇護をかれは受けていた。密告に次ぐ密告。こんな言葉が狭い町で日常的に起こっていた。ある日、ペペはパリから来たギャビーにひとめ惚れしてしまう。イネスの泥臭さとは打って変わってギャビーはパリのムードを全身で体現していた。そんなギャビーは人妻だったが、二人が恋に落ちるにはたいして時間は必要としなかった。

母親想いののピエロが騙されて死んだ。ペペをおびき寄せる警察の計略にはまったのだった。ピエロは満身創痍でペペの前にたどり着き、最後の呼吸を密告者にピストルの銃口とともに傾けた。が、寸でで息絶える。ペペはピエロの手を取り発砲、この町で裏切り者は死を背負い込むことになる。

ギャビーがパリへ帰ることになった。ペペは一緒に行きたかったがカスバを出ることは自死に近い暴挙。一方で、ギャビーに一途になってしまったペペへのイネスの嫉妬。これらが互いに交錯しながらラストに差し掛かってくる。

カスバを立ち客船に乗るギャビー。後ろ髪惹かれる思いだ。そしてペペはそんなギャビーに逢うためにカスバの丘陵を走りながら下っていく。迫力あるシーンだ。そしで港にたどり着く。警察網を交わすことなどできない。蒸気船はボーっと爆音を奏でる。ちらりと後ろを向くギャビー。それを目で追うペペ。手錠をかけられただひたすらに望郷を思い「ギャビーっ」と叫ぶペペ。だが汽笛にその声もかき消されてしまう。ペペは内ポケットからナイフを取り出し、みずからの腹をそれでえぐる。

白壁づくりのカスバの街並み。そして青々とした空。太陽が燦々と降りそそ。白黒もいいがカラーで全身で鑑賞したくなる映画だ。