或るニートのブログ ~映画と絵画の日々~

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映画「他人のそら似」喜劇は悲劇

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中学生のころ、ブルース・リーのそっくりさんを見た。ブルースのファンイベントでのことだ。一瞬ちょっとすれ違っただけなので、ディテールまでは判然としなかったが、確かにブルースに似ていたし、オーラがあった。そして強そうに見えた。
フランス映画界の重鎮ミッシェル・ブランは最近、トラブルメーカーとなっていた。というのもシャルロット・ゲンズブールにちょっかいを出したり、二十年来の女友達をレイプしたりと…。その強姦罪はアリバイを握っていたキャロル・ブーケが何とか立証しミッシェルは釈放された。が、波乱はこれから起こる。
近ごろ様子のおかしいミッシェルは精神科の扉をノックした。心身症的なのでと、医師から田舎での静養を進められる。嫌がるミッシェルを腕づくで自分の別荘へ手引きしてくれるキャロルめブーケには男気さえうかがわれた。そしてこの一連のスキャンダルの真相はその別荘にて詳らかにされた。「ミッシェル・ブラン来店」と新聞の広告欄に見たスーパーマーケットの文言だ。
さっそく、ミッシェルはその偽物を懲らしめてやろうと開催所のスーパーマーケットの裏口で待機する。が、あまりにも情けないその偽物の営業内容に愕然としてしまう。懲らしめてやろうとして偽物を追いかけるミッシェル。ここは一人二役。ある意味偽物が本物を追いかけている後の伏線上につながるシチュエーションだ。ミッシェルはここで偽物の落とした手帳を収穫する。
キャロル・ブーケを連れて偽物の自宅にたどり着く。しかしここでもとんだ欺瞞がひしめいていた。ミッシェルの偽物のお母さんも、なんと息子がホントのミッシェルだと信じ込み、せがれを自慢に思っていたのだった。もうこの辺になるとどっちが本物か偽物かわからなくなってくる。この偽物宅の近所には半身不随になって久しい男がベッド横臥していた。すると彼の母親がキャロル・ブーケが近所に来ていると知り彼女に是非とも息子にあってもらいたいと懇願される。慈悲心のあるキャロルはさっそく病床を訪ねる。すると男は滅茶苦茶興奮して、立ち上がり、その上エレクトまでしてしまう始末でキャロルに迫る。逃げるキャロル。追いかける男。息子の病が治ったと喜ぶ母親。
一方。偽物に対峙したミッシェルは偽物から「面倒な仕事は俺が引き受ける」と和解案を提示され了承する。それでも偽物は破廉恥な行為をやめたりしない。ある時本物を乗せたキャロルの車の中でふたりが口論となり、車外に放り出される。しかし気を取り直したキャロルはふたたび彼を助手席に導く。そっちが偽物だとも知らずに。
もうヤケになった本物は宝飾店に押し入り強盗まがいのことをして、偽物のイメージ損傷に躍起になる。この際もキャロルの説得でその場は落ち着き、本物は警察の手へ。
出所したミッシェルはそっくりさんのマネージメントをする芸能プロダクションに入る。そんな数いるそっくりさんの中に名優フィリップ・ノワレが混じっていた。フィリップはそこでミッシェルに向かい「私もあなたと同じようにしてここへたどり着いた」と本音を吐露。そして現今のフランス映画界を愚痴る。得心したミッシェルは「これから一緒に地方巡業でもしよう」と同意を求める。かくして二人の数奇な運命は喜劇としては洒落にならない様相を呈する。フランス映画界を巻き込んだ本格的なコメディ作品。