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映画「勝手にしやがれ」君は最低だ

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君は最低だ

 

ミッシェル・ポワカール、後の指名手配犯。ロケーションは南仏マルセイユ。その場しのぎで生きる男のプロローグ。新聞紙を手にゴロワーズをくわえるしたたかな目は虚空をとらえていた。手引ぎする女をしり目に自家用車をかっぱらい、パリに向かう。

パリへの道中、交通違反で二台の白バイに追いかけられるも、袋小路に追い詰められれば冷酷にもひとりの白バイ隊を射殺。指名手配への序章が幕を開ける。

ミッシェルはパリに着いた。このあたりでゴダールのいい加減なドラマツルギーが露呈する。いい加減、と記したがこれは良い意味でのいい加減だ。ミッシェルは走ってパリまでたどり着いたのか? このあたりの説明に不条理性が台頭する。

パトリシアは米国からの留学生でニューヨーク・ヘラルド・トレビューンという新聞紙の売り子兼記者。ミッシェルと南仏で知り合い、彼がぞっこんになった女だ。「一緒にローマへ行こう」と言いながらパトリシアに近づくミッシェル。パリの街路を連れ立って歩く印象的なシーン。彼らはともに愛し合っていた。

カフェで朝食と取ろうと小銭を取り出すミッシェル。ついでに朝刊を買いに行く。まだ白バイ隊の事件は大っぴらにはなっていないようだ。その足で航空会社に勤務するマブダチのギャビーのところへ。振り込みの金が入ってるはずなのだが小切手で支払われことになっていた。ベルリッティに頼めば現金化してもらえると聞いたミッシェルはギャビーと別れる。と、その直後に刑事二人がギャビーのもとへ。「ミッシェルは来なかったか?」ついに指名手配犯となってしまったミッシェルは別の女のもとへ行き、とりあえずいくばくかのカネを手に入れパトリシアのアパルトマンへ。

パトリシアは留守だったがフロントの目を盗んで鍵を手に、彼女の部屋に潜り込んだ。あくる朝、ふたりはくたびれたシーツの上に寝転がりしばし歓談。ミッシェルの最期は間もなく訪れる警鐘に傾ける耳は持たなかった。

ピカソルノワール。天才画家の描いた幾千枚の絵のモデルたちも今パトリシアの前では押し黙るより仕方なかった。パトリシアはその日高名な作家パブリスキーへの取材に空港へ赴く。

季節感のないフィルム。ミッシェルの逮捕包囲網は着々と進んでいた。町の電光掲示板でも彼の逮捕直前を知らせる文字が明滅していた。愛するパトリシアのもとへも刑事がやってくる。ここからは男女二人の逃走劇かに見えた。が、パトリシアはミッシェルを裏切った。

逃亡先の部屋でふたりは最後の愛を契った。そしてベルリッティとのコンタクトも取れる手はずとなった。しかし警察の包囲網はじわじわと迫ってくる。

ラスト。ベルリッティがカネを手にしたミッシェルだったが背後からパトリシアに手招きされたデカふたりが彼に迫った。ベルリッティは車でその場を離れた直後、銃弾がミッシェルの背中にとどめを差した。街路をよろめきながら小走りするミッシェル。やがて精も魂も尽きた。路上で仰向けに倒れた彼を取り巻く刑事二人とパトリシアの前でかこった最後のダイイングメッセージはパトリシアに向けられた。

「君は最低だ」